絵襖
えぶすま
名詞
標準
文例 · 用例
頬のかかり白々と、中にも、円髷に結ったその細面の気高く品の可い女性の、縺れた鬢の露ばかり、面婁れした横顔を、瞬きもしない双の瞳に宿した途端に、スーと下りて、板の間で、もの優しく肩が動くと、その蝋の火が、件の絵襖の穴を覘く……その火が、洋燈の心の中へ、※と入って、一つになったようだった。
— 泉鏡花 『霰ふる』 青空文庫
安っぽい絵襖紙を見る様なギラギラした感じのする下びた町すじを母の手にすがりついて物なれない人の様に特別な感じをうけながら――。
— 宮本百合子 『芽生』 青空文庫
入り側にむいた吉野障子は、磨硝子とニッケルを組み合わせた、モダーン・タイプの硝子扉になり、なにやらの工匠が彫った有名な欄間と、銀の引手のついた花鳥の絵襖が取り払われ、襖のあったところにテックスの間仕切りができ、ぞっとするような富士山の油絵がかかっていた。
— 久生十蘭 『我が家の楽園』 青空文庫
特に三つの座敷は絵襖なので、表具のできる職人でなければならない。
— 山本周五郎 『さぶ』 青空文庫
絵襖には裏打ちの紙が幾種類か必要である、描いてあるのが紙本の場合と絹本の場合とで、薄美濃とか雁皮などの、じかに貼る肌裏や、中裏、増裏など、それぞれ表に合った性質の紙を使わなければならないし、もちろん手漉きだから、同じ美濃でも粗密や薄手厚手があるし、紙の地にむらのないことも、大事な条件となる。
— 山本周五郎 『さぶ』 青空文庫
背後の左右は、絵襖で仕切られており、それらには色紙形に和歌の画賛などの描かれた金襖となっている。
— 藤野古白 『人柱築島由来』 青空文庫
これ、止めはしませぬと言いますに……第三場 福原の館の一部屋一面の平舞台は絵襖で仕切られている。
— 藤野古白 『人柱築島由来』 青空文庫
淡墨の絵襖に、高脚の切燈台の灯が静かにまたたいて、黒い艶をもった柱、古色をおびた天井、つぶし貝が星のように光る砂壁など、いかさま千余年来の旧家と思われる落着きです。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫