逸興
いっきょう
名詞
標準
文例 · 用例
七日、丁酉、去る四日の弓の勝負の事、負方の衆所課物を献ず、仍つて営中御酒宴乱舞に及び、公私逸興を催す、以其次、武芸を事と為し、朝廷を警衛せしめ給はば、関東長久の基たる可きの由、相州、大官令等諷詞を尽さると云々。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
酔漢が寝床に追ひやられた後で、鋳掛屋さんと話す、私が槍さびを唄つて彼が踊つた、ノンキすぎるけれど、かういふ旅では珍らしい逸興だつた、しかし興に乗りすぎて嚢中二十六銭しか残つてゐない、少し心細いね――嚢中自無銭!
— 種田山頭火 『行乞記』 青空文庫
潔癖1「自分の描く竹は、唯もう胸の逸興を写しただけで、葉や枝の恰好がどうかということはあまり詮議しない。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫
如何にして造化の秘蔵に進み、粋美を縦にすることを得む、如何にして俗韻を脱し、高邁なる逸興を楽むを得む。
— 北村透谷 『松島に於て芭蕉翁を読む』 青空文庫
二十一 ことがここに至っては、いかに逸興の詩人騒客といえども、再び以前の興を取戻すことは不可能でしょう。
— 白雲の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
満庭の樹影|青苔の上によこたはりて清夏の逸興|遽に来るを覚ゆる時、われ年々来青花のほとりに先考所蔵の唐本を曝して誦読日の傾くを忘る。
— 永井荷風 『来青花』 青空文庫
過去の旅を反芻していると、老いを感ずる一方、また無限の逸興に駆られて、往時も昨日の如く新らしい。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫
つまり、豪邁な平賀元義の、五番町石橋の上にわが××を手草にとりし吾妹子あはれ、といふあのラブレエ風の名歌の、『手草にとる』程度の逸興で、興去れば路傍の花の如く顧みなくなる。
— 辰野隆 『書狼書豚』 青空文庫