綴じ目
とじめ
名詞
標準
seam
文例 · 用例
姫は益々呆れてしまって、思わず手に持っていた書物をパタリと地上に取り落すと、間もなく颯と吹いて来た秋風に、綴じ目がバラバラと千切れて、そのまま何千何万とも知れぬ銀杏の葉になって、そこら中一杯に散り拡がった。
— 夢野久作 『白髪小僧』 青空文庫
しかし草紙の綴じ目が切れて紙がバラバラになり、それが秩序もなくつかねてあったとする。
— 和辻哲郎 『日本精神史研究』 青空文庫
すなわち平安朝の写本が源平時代あるいは保元平治のころに右に言ったような「綴じ目の切れた」という状態で次の時代へ伝えられる。
— 和辻哲郎 『日本精神史研究』 青空文庫
そして何より無気味なのは、署名の下に小さな花弁を押したようにひろがっている茶褐色の斑点であって、同じものが半紙の綴じ目の割り印を捺すべき所にも二つぽたぽたとにじんでいる。
— 谷崎潤一郎 『卍(まんじ)』 青空文庫
百草の花のとじめと律義にも衆芳に後れて折角咲いた黄菊白菊を、何でも御座れに寄集めて小児騙欺の木偶の衣裳、洗張りに糊が過ぎてか何処へ触ッてもゴソゴソとしてギゴチ無さそうな風姿も、小言いッて観る者は千人に一人か二人、十人が十人まず花より団子と思詰めた顔色、去りとはまた苦々しい。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
自分がこんな影の多い人間になったのは大変病身だったのでいつでも父母をはなれて祖母の隠居部屋で草艸紙ばっかり見て育ったのとじめじめした様な倉住居がそうしたのだとも云った。
— 宮本百合子 『蛋白石』 青空文庫
手のはずみで左側の唐紙をあけたりするときもあって、そうすると戸棚の中から古い経木の海水帽だの、とじめがきれてモミがこぼれるまま放りこんである枕だのが現れる。
— 宮本百合子 『猫車』 青空文庫
」 しかし貝十郎も敏捷、飛びかかると織江を引っとらえ、門内へ駈け込むと大音声、「門とじめされ!
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫