掠れ声
かすれごえ
名詞
標準
文例 · 用例
」と掠れ声を白く出して、黒いけんちゅう羊羹色の被布を着た、燈の影は、赤くその皺の中へさし込んだが、日和下駄から消えても失せず、片手を泳ぎ、片手で酒の香を嗅分けるように入った。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
」と詰るが如くに掠れ声して、手を握つて、空を打つて、天守の屋根を睨んで喚いた。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
」 掠れ声して、「もう、いつか、いつかから、ほんに逢いたい逢いたいと思うて、どれだけ、何年になる事やら。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
……」と掠れ声を出す。
— ――幼年時代・少年時代・青年時代―― 『マクシム・ゴーリキイの伝記』 青空文庫
それは腸のドン底から絞り出る戦慄を含んだカスレ声であった。
— 夢野久作 『戦場』 青空文庫
)咽喉にからまるやうなカスレ声で性急に口吟んだ。
— 牧野信一 『くもり日つゞき』 青空文庫
おとはやと云ふのを野田のやうに、半分肚の底へのんで、たやア――とひゞくやうに、頤を引いて叫んだのですが、出さうとした音声が思はず鵜呑にされて、いかにも間の抜けたカスレ声がぴいつと響くやうに震えたまゝ飛んで行つたのです。
— 牧野信一 『早春のひところ』 青空文庫
古い段通を敷いた六畳程の部屋、下を硝子戸の本棚にして金字の書巻のギッシリ詰まった押入を背にして、蒲団の上に座って居る浅黒い人が、丁寧に頭を下げて、吸い込む様なカスレ声で初対面の挨拶をした。
— 徳冨健次郎 『みみずのたはこと』 青空文庫