見得
みえ
名詞
標準
文例 · 用例
あとから思うと闇の夜に顔も見得ず別れてしまったような気がしてならない。
— 伊藤左千夫 『奈々子』 青空文庫
奈良朝以前の万葉仮名の資料は甚だ少ない故に、確実に実証することは困難であるが、そう見れば見得る例はないでもないのである。
— 橋本進吉 『国語音韻の変遷』 青空文庫
この前の性向が、彼に哲人の見得をあたへ、この後の性向が、彼に近代的藝術家の見得をあたへた。
— 萩原朔太郎 『非論理的性格の悲哀』 青空文庫
私は蛞蝓に会う前から、私の知らない間から、――こいつ等は俺を附けて来たんじゃないかな―― だが、私は、用心するしないに拘らず、当然、支払っただけの金額に値するだけのものは見得ることになった。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
その時に、その何物も見得ない暗の中で、懸命に波浪と潮流とに対抗することは、その運命を、牢獄内に朽ちしめるように決定された、無期徒刑囚のような神経になりおおせた彼らであっても、なし得ない辛抱であった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
そしてこの時になって初めてそこに神を見得たのである。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
それ故に物理学者の考える地震というものは結局物理学の眼鏡を透して見得るだけのものに過ぎない。
— 寺田寅彦 『地震雑感』 青空文庫
そのまま横坐りに見得もなく、長火鉢の横から肩を斜めに身を寄せて、翳すがごとく開いて見せたは……「や!
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫