這廻
這廻
名詞
標準
文例 · 用例
殿たちの空を飛ぶ鳥は、私等が足の下を這廻る、水底の魚が天翔ける。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
が、吉野紙を蔽えるごとき、薄曇りの月の影を、隈ある暗き葎の中、底を分け出でて、打傾いて、その光を宿している、目の前の飛石の上を、四つに這廻るは、そもいかなるものぞ。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
中にも旅僧は何をトッチたか、膝で這廻って、雛芥子の散った花片の、煽で動くのを、美しい魂を散らすまいとか、胸の箱へ、拾い込み拾い込みしたのである。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
蚊帳を釣っても寝床の上をうようよと這廻る――さ、その夜あけ方に、あれあれ峠を見され、羽蟻が黒雲のように真直に、と押魂消る内、焼けました。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
おのれ、と心をまず丹田に落つけたのが、気ばかりで、炎天の草いきれ、今鎮まろうとして、這廻るのが、むらむらと鼠色に畝って染めるので、変に幻の山を踏む――下駄の歯がふわふわと浮上る。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
俗務をおッつくねて、課長の顔色を承けて、強て笑ッたり諛言を呈したり、四ン這に這廻わッたり、乞食にも劣る真似をして漸くの事で三十五円の慈恵金に有附いた……それが何処が栄誉になる。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
それは其でよいとして、さて、其夜お定りの床盃がすみ、彌よ嫁御が死ぬる段に成て、叔父が較や遠方から偵がふと、怪しむべし、新夫婦のみ籠つた新築の離れ屋の、ぐるりの石垣に、幾らともなく横さらふ角鹿の蟹樣の物が取付き這廻る。
— 南方熊楠 『蓮の花開く音を聽く事』 青空文庫
土橋を渡ると、両側は若松の並木、其路傍の松蔭の夏草の中に、汚い服装をした一人の女乞食が俯臥に寝てゐて、傍には、生れて満一年と経たぬ赤児が、嗄れた声を絞つて泣きながら、草の中を這廻つてゐた。
— 石川啄木 『二筋の血』 青空文庫