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棄身

棄身
名詞
1
標準
文例 · 用例
よしそれとても、棄身の私、ただ最惜さ、可愛さに、気の狂い、心の乱れるに随せましても、覚悟の上なら私一人、自分の身は厭いはしませぬ。
泉鏡花 草迷宮 青空文庫
蝶吉は残少になった年期に借り足して、母親を見送ってからは、世に便なく、心細さの余、ちと棄身になって、日頃から少しは飲けた口のますます酒量を増して、ある時も青楼の座敷で酔った帰りに、夜更けて京町の夜露の上に寝倒れた。
泉鏡花 湯島詣 青空文庫
まだ、金の蔓があって、一式のことに落籍して素人にしてやろうと、内々思ってました内は、何かしら心の底に温があったのを、断然、使を帰した上、夫人の心も知れて見れば、いかに棄身になった処で、無心などいえたものじゃあない。
泉鏡花 湯島詣 青空文庫
こゝで厭味など言つて喧嘩をするでもないと思つたので、晴代は晴代らしく棄身の戦法に出た。
徳田秋声 のらもの 青空文庫
兎に角、小生が他の妻女たる人と苦しい恋に堕ちかかつてゐて猶旦二人共長い間耐え忍んでゐた事も事実ですし、激しい盲目的な愛情の為に夫も棄てその子も棄て真に棄身になつて縋りついて来た女に対して終に自己の平時の聡明に自ら克ち得なかつた事も極めて浅ましい最近の事実で御座います。
北原白秋 わが敬愛する人々に 青空文庫
一歩の空間を行き尽した靴は、光る頭を回らして、棄身に細い体を大地に托した杖に問いかけた。
夏目漱石 虞美人草 青空文庫
これぞと思う本があればポケットを空にしても構わないぐらい棄身の決心をしている事だけはたしかである。
夢野久作 探偵小説の正体 青空文庫
月丸は、庄吉の、棄身な、突撃を、身体ぐるみで、躱けると共に、深雪の妨げに、激怒した。
直木三十五 南国太平記 青空文庫