溢出
いっしゅつ
名詞
標準
文例 · 用例
処で、火気は当るまいが、溢出ようが、皆|引掴んで頬張る気だから、二十ばかり初茸を一所に載せた。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
」 二 そう云って、綻びて、袂の尖でやっと繋がる、ぐたりと下へ襲ねた、どくどく重そうな白絣の浴衣の溢出す、汚れて萎えた綿入のだらけた袖口へ、右の手を、手首を曲げて、肩を落して突込んだのは、賽銭を探ったらしい。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
貫目を引きつつ、膝のめりやすを溢出させて、「まるで、こりゃ値になりませんぞ。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
小鍋立というと洒落に見えるが、何、無精たらしい雇婆さんの突掛けの膳で、安ものの中皿に、葱と菎蒻ばかりが、堆く、狩野派末法の山水を見せると、傍に竹の皮の突張った、牛の並肉の朱く溢出た処は、未来派尖鋭の動物を思わせる。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
女房がまた、背筋や袖をしなり、くなり、自由に揉まれながら、どうだい頬辺と膝へ、道士、逸人の面を附着けたままで、口絵の色っぽい処を見せる、ゆうぜんが溢出るなぞは、地獄変相、極楽、いや天国変態の図だ。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
縁側でも呻唸り出す――数百の虫が一斉に離座敷を引包んだようでしょう、……これで、どさりと音でもすると、天井から血みどろの片腕が落ちるか、ひしゃげた胴腹が、畳の合目から溢出そう。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
濡れに寄るにも、袖によるにも、洋杖は溢出しますから、件の牛蒡丸抜安です。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
この謙斎坊さんは、座敷は暖かだし、精を張って、つかまったから、十月の末だと云うのに、むき身|絞の襦袢、大肌脱になっていて、綿八丈の襟の左右へ開けた毛だらけの胸の下から、紐のついた大蝦蟇口を溢出させて、揉んでいる。
— 泉鏡花 『怨霊借用』 青空文庫