至境
しきょう
名詞
標準
文例 · 用例
これに反して或る小説家等の作る俳句が、技巧と着想の妙を尽し、観照の至境に入っているにかかわらず、何かしら物不足で、詩としての霊魂がないように思われるのは、認識の態度が純粋に客観的で、対象について対象を観照し、これを主観の心情に融解することがないからである。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
意味の通ずる言葉を使うだけの余裕分別のあるうちは一心不乱の至境に達したとは申されぬ。
— 夏目漱石 『趣味の遺伝』 青空文庫
漆桶を抜くがごとく痛快なる悟りを得て歓天喜地の至境に達したのさ」 あまり迷亭の言葉が仰山なので、さすが御上手者の鈴木君も、こりゃ手に合わないと云う顔付をする。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
三更月下入無我とはこの至境を咏じたものさ。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
しかしまだまだ至境には遠い。
— 国枝史郎 『柳営秘録かつえ蔵』 青空文庫
玄の玄、妙の妙なる音芸術の至境であると言ってもよい。
— 野村胡堂 『楽聖物語』 青空文庫
法悦の至境はおのずからなる摂取にある。
— 亀井勝一郎 『大和古寺風物誌』 青空文庫
有の至境であって、また無に近い相ではあるまいか。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫