饐
饐
名詞
標準
文例 · 用例
ああ なににあこがれもとめてあなたはいづこへ行かうとするかいづこへ いづこへ 行かうとするかあなたの感傷は夢魔に饐えて白菊の花のくさつたやうにほのかに神祕なにほひをたたふ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
次第に喬木の森林に入った、白く光る朽木は、悪草の臭いや、饐えたような地衣の匂いの中に立ち腐れになっている、うっかり手が触れると、海鼠の肌のような滑らかで、悚然とさせる、毒蚋が、人々の肩から上を、空気のように離れずにめぐっている、誰も螫されない人はない、大樺池を直ぐ眼の下に見て、ひた下りに下る。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
すえたる菊その菊は醋え、その菊はいたみしたたる、あはれあれ霜つきはじめ、わがぷらちなの手はしなへ、するどく指をとがらして、菊をつまむとねがふより、その菊をばつむことなかれとて、かがやく天の一方に、菊は病み、饐えたる菊はいたみたる。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
人々もそれを気付くらしく、わたくしを顧る顧り見方に、花ならば饐え腐った蕾の滓、葉ならば霜に朽ち佗びた葛の裏葉の、返して春に、よも逢う女ではあるまいと、不憫がる眼の眇め方をするのはあまり面白いものではありません。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
かび臭い、ごみ臭い、また饐えたやうなもののにほひは複雜なおもひを誘つてやまなかつた。
— 島木健作 『第一義の道』 青空文庫
饐えたやうなにほひのこもる夜の裏街に灯がつくと寒く飢ゑてゐる僕の心も亦あつたまつて來る。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
「生活の饐える臭だ!
— 三島霜川 『平民の娘』 青空文庫
窓がしまつてゐるので、客車は饐れてゐた。
— 徳田秋聲 『芭蕉と歯朶』 青空文庫