温石
おんじゃく
名詞
標準
heated stone (wrapped in cloth and kept next to the body for warmth)
文例 · 用例
駅長宮沢賢治ことことと行く汽車のはて温石いしの萱山の上にひとつの松ありてあるいは雷にうたれしや三角標にまがへりと大上段に真鍮の棒をかざしてさまよへりごみのごとくにあきつとぶ高圧線のま下にて秋をさびしき白服の酒くせあしき土木技手いましも汽車を避け了へてこなたへ来るといまははた急ぎガラスを入りにけり
— 宮沢賢治 『駅長』 青空文庫
〔水と濃きなだれの風や〕水と濃きなだれの風や、 むら鳥のあやなすすだき、アスティルベきらめく露と、 ひるがへる温石の門。
— 宮沢賢治 『文語詩稿 五十篇』 青空文庫
粮と温石と凍餓共に救う、万全の策だったのである、けれども、いやしくも文学者たるべきものの、紅玉、緑宝玉、宝玉を秘め置くべき胸から、黄色に焦げた香を放って、手を懐中に暖めたとあっては、蕎麦屋の、もり二杯の小婢の、ぼろ前垂の下に手首を突込むのと軌を一にする、と云って斥けた。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
急に袷が欲しいほどに涼しくなって、疝気もちの用人はもう温石を買いにやったなどといって、蔭で若侍たちに笑われていた。
— 岡本綺堂 『両国の秋』 青空文庫
それがどうしても堪えられなくなって、昼から温石などで凌いでいたが、日が暮れると夜の寒さが腹に沁み透って来た。
— 半鐘の怪 『半七捕物帳』 青空文庫
先がたから冬の日を腹一杯吸込んでゐた庭石は、温石のやうに着物を透して肌に温かだつた。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
冬だと、彼はその道中に、餅の大きなの一つ、小さいのを二つ焼いて、温石のように体につけて持って行った。
— 宮本百合子 『余録(一九二四年より)』 青空文庫
「旦那様、酷くお腹が痛みますなら、冷えると余計悪くなりますので、河原の石でも焼いて、間に合せの温石でもお当てなさいますか」と親切は面に現われた。
— 江見水蔭 『悪因縁の怨』 青空文庫
ウィキペディア
温石(おんじゃく)とは、平安時代末頃から江戸時代にかけて、石を温めて真綿や布などでくるみ懐中に入れて胸や腹などの暖を取るために用いた道具。
出典: 温石 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0