瞬ぎ
まじろぎ
名詞
標準
文例 · 用例
」 太田の聲が耳にはいると、男は一瞬ぎくりとしたふうであつたが、たちまちその節くれ立つた兩手をぴつたりと板の間につかへ、額が下につくほどに平たくなつて禮をした。
— 島木健作 『黎明』 青空文庫
」 逆立った眼で葉之助を見据え、紋兵衛は瞬ぎもしなかったが、ようやくホッと溜息を吐くと、「人違いであった。
— 国枝史郎 『八ヶ嶽の魔神』 青空文庫
ゆき子は、一瞬ぎよつとして息をのんだ。
— 林芙美子 『浮雲』 青空文庫
もっともあれほどのご主君に弓を引こうと云うのだからその張本は他にあろうが、俺の目差したその野郎はそいつの手下に相違ねえ」 藤作はそう云う右衛門の顔を瞬ぎもせず見ていたが、「手証を見なくとも大事ない。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
人びとはただ一瞬ぎょっとしただけだった。
— DIE VERWANDLUNG 『変身』 青空文庫
彦太郎は一瞬ぎょっとして卯平の女房の顔を見つめたが、いつか山の池の傍で見た時のような気違いじみた凄さはなく、にこにこしているので、もう狐は落ちたのだろうとようやく合点が行き、あんた、なおりましたかな、と訊いた。
— 火野葦平 『糞尿譚』 青空文庫
王子は一瞬ぎょっと青ざめましたが、元の顔に戻り、そしらぬ風でした。
— The Slave of Silence 『くちなしの花』 青空文庫
しかも寝起きの唐突に、それを自分と同じ高さに見出して、対い合ったのであるから、彼はしばらくわれを忘れ、ただ、「――ああ」 というため息を胸の中に曳いて、瞬ぎもせず眺め入っていた。
— 空の巻 『宮本武蔵』 青空文庫