嶮山
嶮山
名詞
標準
文例 · 用例
」 もの幻の霧の中に、あけの明星の光明が、嶮山の髄に浸透つて、横に一幅水が光り、縦に一筋、紫に凝りつつ真紅に燃ゆる、もみぢに添ひたる、三抱余り見上げるやうな杉の大木の、梢近い葉の中から、梟の叫ぶやうな異様なる声が響くと、「羽黒の小法師ではないか。
— 泉鏡花 『妖魔の辻占』 青空文庫
峨峰、嶮山に囲まれた大湖だから、時々颯と霧が襲ふと、この飛んでるのが、方角に迷ふうちに羽が弱つて、水に落ちる事を聞いてゐた。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
深山に入り、高山、嶮山なんぞへ登るということになると、一種の神秘的な興味も多いことです。
— 幸田露伴 『幻談』 青空文庫
路のなき嶮山を五里もゆくは、平地を十五里ゆくよりも困難也。
— 大町桂月 『十和田湖』 青空文庫
背後は嶮山左右は巉岩、そうして前は大海です。
— 国枝史郎 『赤格子九郎右衛門』 青空文庫
熊野路一帶は海岸から急に聳え立つた嶮山のために大洋の氣を受けて常に雨が多いのださうだが、今日の雨はまた別だ。
— 若山牧水 『熊野奈智山』 青空文庫
ははあ、グロース・シュレックホルンへ、なーる、なんて、自分は小屋までで帰る約束だからかも知れないが、いやしくも、オーベルラント第一の嶮山とあるのを、別に気にも留めない様子、耄碌したのか、それともそれ程にも感じないのか、山に千年てなり形が第一心憎くい。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
白骨への嶮山難路を、今の時候に、今の時刻に、しかもひとり旅で辿るということは、全く思い設けぬことで、何か非常の用向があるか、そうでなければ、ついつい道に迷って、松本平へ帰ることもできないし、そうかといって飛騨の国へ出ようというのは途方もないことです。
— 鈴慕の巻 『大菩薩峠』 青空文庫