澹
たん
形容動詞
標準
文例 · 用例
暗澹とした空の下を重たい鋼鐵の機械が通る無數の擴大した瞳孔が通るそれらの瞳孔は熱にひらいて黄色い風景の恐怖のかげに空しく力なく彷徨する。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
「こうした暗澹たる事態の下に」自分は幾度か懐疑した。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
然るに今日の天文学は、月が死滅の世界であって、暗澹たる土塊にすぎないことを解明している。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
五月雨や蚕わづらふ桑畑 暗澹とした空の下で、蚕が病んでいるのである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
実際問題に打つ衝るとその衝に当るものは、幸福の代りに惨澹たる不幸を脊負込むのである。
— 葉山嘉樹 『工場の窓より』 青空文庫
すつかり葉をふるひ落した裸のポプラ並木、からからに凍りついた歩道、明りを消し、二重窓を降して冷たい沈默を包んでゐる煉瓦や石造りの暗い家並、毎日毎夜の不安な空氣に脅かされてゐる町は、朝から曇つたままに暮れ落ちた暗澹たる夜空の下に、わけても眞夜中過ぎのその夜は、人通さへ稀に無氣味な程に鎭まり返つてゐた。
— 南部修太郎 『ハルピンの一夜』 青空文庫
下 恁て、數時間を經たりし後、身邊の人聲の騷がしきに、旅僧は夢破られて、唯見れば變り易き秋の空の、何時しか一面掻曇りて、暗澹たる雲の形の、凄じき飛天夜叉の如きが縱横無盡に馳せ※るは、暴風雨の軍を催すならむ、其一團は早く既に沿岸の山の頂に屯せり。
— 泉鏡花 『旅僧』 青空文庫
日中なれども暗澹として日の光|幽に、陰々たる中に異形なる雨漏の壁に染みたるが仄見えて、鬼気人に逼るの感あり。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫