萎れ
しおれ
名詞
標準
文例 · 用例
真昼の光はあつても少しくであり、それもやがて暮れるとしてのことのやうであり、此処では、紅の花も、やがて萎れて黝ずんだ色になるとしてのことである。
— 中原中也 『宮沢賢治全集』 青空文庫
――夕明下に投げいだされた、萎れ大根の陰惨さ、あれはまだしも結構だつた――今や黒い冬の夜をこめどしやぶりの雨が降つてゐる。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
私が喉が乾いて萎れかけた時には、ただ、うろうろして、奥さんをひどく叱るばかりで何も出来ないの。
— 太宰治 『失敗園』 青空文庫
併し花を活けて寫生しようと思ふとすぐに萎れたり、又此れに反して勢のいゝのは日毎の變化が餘りにはげしくて未熟なものゝ手に合はなかつた。
— 寺田寅彦 『寫生紀行』 青空文庫
開幕前妾がひどく打萎れているのを見て、一座の日本女優の松子がそれと察して、ジョージ・佐野が、今日は珍らしくはしゃいで好きな場末の流行歌などを歌ってふざけていたなどと、妾に告げて呉れました。
— 吉行エイスケ 『バルザックの寝巻姿』 青空文庫
」4 夜が更けて僕が眼覚めたとき、かたわらには腐敗しかかった売笑婦の肉体が萎れた花のように残っていた。
— 吉行エイスケ 『戦争のファンタジイ』 青空文庫
小さな通船は、胸の悩みに、身もだえするままに揺動いて、萎れつつ、乱れつつ、根を絶えた小船の花の面影は、昼の空とは世をかえて、皓々として雫する月の露吸う力もない。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
渠はこの憤りと喜びと悲しみとに摧かれて、残柳の露に俯したるごとく、哀れに萎れてぞ見えたる。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫