風冷
ふうれい
名詞
標準
文例 · 用例
」 細りたる声に力を籠めて突出すに、一掴みの風冷たく、水気むら/\と立ちのぼる。
— 泉鏡花 『紫陽花』 青空文庫
……お二階の病床を、久しぶりで、下階の八疊の縁さきで、風冷かな秋晴に、湯どうふを召がりながら、「おい、そこいらに蓑蟲が居るだらう。
— 泉鏡太郎 『湯どうふ』 青空文庫
風冷えて鐘の音も清み渡る江村の秋の夕など、雲漏る薄き日ざしに此花の咲くものならんには、我必ずや其蔭に倒れ伏して死もすべし。
— 幸田露伴 『花のいろ/\』 青空文庫
「ある夜月凄じく風冷やかなるに、この勾当の内侍半ば簾を捲きて琴を弾じ給ひけり、中将その艶声に心引かれて、覚えず禁庭の月に立ちさまよひ……」 恰で自分が内侍と色事でもしてゐるやうな調子で、若い変な声を出して何時迄も読み続けるので、どんな相手でもついその記憶力に感心させられてしまふ。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
呉羽之介、女歌舞伎宇喜川お春と初恋する事 呉たけの根岸の里の秋|闌けて、片里が宿の中庭の、花とりどりなる七草に、櫨の紅葉も色添えて、吹く風冷やけき頃とはなりました。
— 三上於兎吉 『艶容万年若衆』 青空文庫
甲板の上|寂として、風冷ややかに、月はいよいよ冴えつ。
— 徳冨蘆花 『不如帰 小説』 青空文庫
午前、虹霓一弓、驟雨一過、南風冷を送り、秋気船窓に入るの心地あり。
— 井上円了 『南半球五万哩』 青空文庫
暁雨漸収雲未収、卜晴郊外試吟遊、満蹊落葉無人掃、風冷南洲五月秋。
— 井上円了 『南半球五万哩』 青空文庫