虫籠
むしかご
名詞
標準
文例 · 用例
虫籠を持たされた児は、時どき立ち留まっては籠の中を見、また竿の方を見ては小走りに随いてゆく。
— 梶井基次郎 『城のある町にて』 青空文庫
あまりのうれしさに、小便が出そうになってきたので、虫売の屋台の前では、股をすり合わせて帰りが急がれたが、浜子は虫籠を物色してなかなか動かないのです。
— 織田作之助 『アド・バルーン』 青空文庫
ただこのくらいな間だったが――山の根に演芸館、花見座の旗を、今日はわけて、山鳥のごとく飜した、町の角の芸妓屋の前に、先刻の囃子屋台が、大な虫籠のごとくに、紅白の幕のまま、寂寞として据って、踊子の影もない。
— 泉鏡花 『怨霊借用』 青空文庫
中宮は童女を庭へおろして虫籠に露を入れさせておいでになるのである。
— 野分 『源氏物語』 青空文庫
そのとき先生は虫籠を示され、その虫を草ひばりと教えられ、その姿に「仄か」という言葉で註せられることを怠られなかった。
— 立原道造 『夏秋表』 青空文庫
枝にはまだ熟しない実が云訳ほど結って、その一本の股の所に、空の虫籠がかかっていた。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
むしろ白日炎天に汗をふきながら下町の横町を通った時、どこかの窓の虫籠できりぎりすの声がひと声、ふた声、土用のうちの日盛りにも秋をおぼえしめるのは、まさにこの声ではあるまいか。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
白地の浴衣を着た若い娘が虫籠をさげて夜の町をゆく。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫