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水沫

すいまつ
名詞
1
標準
文例 · 用例
暫らく停まつて呼吸を入れてゐた船は、こつちを目がけて、走つて来る、難所中の難所といふ、やぐらの瀑へかゝつて来たときは、波から三尺ばかり船体が乗り出したと思ふと、水煙が噴水の柱のやうに立つて、船頭の黒い立像が、水沫の中から二体浮び出た、火影に映る消防夫の姿のやうに。
小島烏水 天竜川 青空文庫
スマ子女史はワイシャツの縫目からミス・フランセのコバルトの細巻をとりだして火をつけると、蒸気のこもった部屋に水沫のように緑色の煙を吐き出して、――だが、人に聞くと君はちかごろ恋のテクニックに夢中なんですって?
吉行エイスケ 職業婦人気質 青空文庫
私はあきらめて岩にくだけて躍る水沫をしばらく眺め、それから帰りました。
太宰治 風の便り 青空文庫
滝の姿は見えねど、滝壺の裾の流れの一筋として白絹の帯上げの結び目は、水沫の如く奔騰して、そのみなかみの※々の音を忍ばせ、そこに大小三つほどの水玉模様が撥ねて、物憎さを感ぜしむるほど気の利いた図案である。
岡本かの子 雛妓 青空文庫
少女はもう何事も諦め、気を更へて、運命の浪の水沫を戯ぶ無邪気な妖女神のやうな顔つきになつてゐる。
岡本かの子 小町の芍薬 青空文庫
二人は今の青年男女が野天のプールで泳ぐように、満身に陽を浴びながら水沫を跳ね飛ばして他愛もなく遊んでいます。
岡本かの子 鯉魚 青空文庫
盤の一つ一つは独木舟を差し込んだように唐突で単純に見えるが、その底は傾斜して水の波浪性を起用し、盤の突端までに三段の水沫を騰らしている。
岡本かの子 噴水物語 青空文庫
涙川浮ぶ水沫も消えぬべし別れてのちの瀬をもまたずて 泣き泣き乱れ心で書いた、乱れ書きの字の美しいのを見ても、源氏の心は多く惹かれて、この人と最後の会見をしないで自分は行かれるであろうかとも思ったが、いろいろなことが源氏を反省させた。
須磨 源氏物語 青空文庫