引き去り
ひきさり
名詞
標準
文例 · 用例
ああまた引き去り高まり來る情慾の浪、意志の浪、邪念の浪。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
一、通し送り荷駄賃、名古屋より福島まで半分割の運上引き去り、その余は御刎ねなく下されたきこと。
— 第一部上 『夜明け前』 青空文庫
けだし、催眠術は簡単にこれを解するに、人の精神作用を他方に引き去りて、暫時の間あたかも睡眠中のごとく、無意無心の境に住せしむるものなり。
— 井上円了 『妖怪学』 青空文庫
このものから次に何であれ右に示した根拠によって極めてわずかなりとも薄弱にせられ得るものは引き去り、かくて遂にまさしく確実で揺がし得ないもののみが残るようにしよう。
— MEDITATIONES 『省察』 青空文庫
このものから次に何であれ右に示した根據によつて極めて僅かなりとも薄弱にせられ得るものは引き去り、かくて遂にまさしく確實で搖がし得ないもののみが殘るやうにしよう。
— MEDITATIONES 『省察』 青空文庫
欧羅巴のカロリナ刑法は、拘禁が餓死に導くように配慮されているが、西蔵人のやりかたは、カロリナ刑法から餓死の部を引き去り、それにハンブルグの鎖拷問と西班牙の拘搾拷問を附け加えたものであることがわかる。
— 久生十蘭 『新西遊記』 青空文庫
僕は全く人通りの杜絶えた並木路にブッ倒れて、暫しの間ひやひやした綺麗な星空を眺めてゐたが、どうやら疼痛も引き去り身動きも出来るやうになつたので、頑固に決意を堅め霓博士の邸宅へとプラタナの闇を縫ひ乍らフラついて行つた―― 何か面白い事件があるのだ、と予感がしたからであつた。
— 坂口安吾 『霓博士の廃頽』 青空文庫
彼是二十|尋ばかり引き去りて、止まりたれば、即ち又手繰れるに、ごつごつと、綸に従きて近づく様明に知れ、近づきては又急に延し、其の勢いの暴き、綸はびんびん鳴りて、切るるか切るるかと、胸を冷せしことを一再のみならず。
— 石井研堂 『大利根の大物釣』 青空文庫