途轍
とてつ
名詞
標準
文例 · 用例
一両ぐらい出しゃ分けられねえこともねえかな、ぐれえなとこだろうぜ」このコックはおもての食費をごまかすために、とものコックから、給料を下げてまでも、おもてへ一つ船で鞍がえした、途轍もない「悪」であった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
」 と途轍もない奇声を揚げた。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
途轍もない処へ行合わせて。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
いや、滅相、途轍もねえ、嬢的にそんなこといわれて堪るもんか、ヘッ、」 と頸を窘めたが、「内証だ、嬢的にゃ極内だがね。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
かかる狂気じみたところのある僧であったから、三条の大きさいの宮の尼にならせ給わんとして、増賀を戒師とせんとて召させたまいたる時、途轍も無き乎、と麁語を訳しているが、これも髣髴たるに至らず、訳して真を失っている。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
一體八景といふのは隨分長い間の流行言葉であつて、何八景|彼八景、しまひには吉原八景、辰巳八景とまで用ゐられて、ふけて逢ふ夜は寢てからさきのなぞと、イヤハヤ途轍も無い邊にまで利用されるに至つたほどであるが、最初はこれも矢張り支那文學美術すべて支那影響を受けた頃に起つたことである。
— 幸田露伴 『華嚴瀧』 青空文庫
「あれは海ね」「仰せのとおり」 倉地は葉子が時々|途轍もなくわかりきった事を少女みたいな無邪気さでいう、またそれが始まったというように渋そうな笑いを片頬に浮かべて見せた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
……もう春も末になりましたね」 途轍もない言葉をしいてくっ付けて木部はそのよく光る目で葉子を見た。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫