小天地
しょうてんち
名詞
標準
a small world
文例 · 用例
見渡すお堀端の往来は、三宅坂にて一度尽き、さらに一帯の樹立ちと相連なる煉瓦屋にて東京のその局部を限れる、この小天地|寂として、星のみひややかに冴え渡れり。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
蠅はほとんどゐない、誰かゞ連れてきたか、私についてきたか、時々二三匹ゐることもあるが、すぐ捕りつくせる、蚊は多い、昼も藪蚊が出て刺す、朝夕は無数の蚊軍が私一人をめがけて押し寄せる、蚊遣線香が買へないから、私はさつそく蚊帳の中へ退却する、そしてその小天地を悠々逍遙する。
— 伊佐行乞 『行乞記』 青空文庫
然し大なる世の中はかゝる小天地に寐ころんで居る樣では到底動かせない。
— 夏目漱石 『鈴木三重吉宛書簡―明治三十九年』 青空文庫
文學者はノンキに、超然と、ウツクシがつて世間と相遠かる樣な小天地ばかりに居ればそれぎりだが大きな世界に出れば只愉快を得る爲めだ抔とは云ふて居られぬ進んで苦痛を求める爲めでなくてはなるまいと思ふ。
— 夏目漱石 『鈴木三重吉宛書簡―明治三十九年』 青空文庫
厭世主義を奉ずる者に至りては、其造れる天地の実世界と懸絶すること甚だ遠しと云ふ可く、婚姻によりて実世界に擒せられたるが為にわが理想の小天地は益狭窄なるが如きを覚えて、最初には理想の牙城として恋愛したる者が、後には忌はしき愛縛となりて我身を制抑するが如く感ずるなり。
— 北村透谷 『厭世詩家と女性』 青空文庫
遮莫、わがルーソー、ボルテイアの輩に欺かれ了らず、又た新聞紙々面大の小天地に※翔して、局促たる政治界の傀儡子となり畢ることもなく、己が夙昔の不平は転じて限りなき満足となり、此満足したる眼を以て蛙飛ぶ古池を眺る身となりしこそ、幸ひなれ。
— 北村透谷 『三日幻境』 青空文庫
「風流仏」、「一口剣」等に幽妙なる小天地想を嘔ひ、一種奇気抜く可らざる哲理を含みたる露伴の詩骨は徒らに「心機霊活の妖物」なる道也の影に痩せさらばひぬ。
— 北村透谷 『「伽羅枕」及び「新葉末集」』 青空文庫
あるいはこの不自由なる小天地に長く跼蹐せる反響として、かく人心の一致集注を見るならんも、その集中点の必ず妾に存せるは、妾に一種の魔力あるがためならずや。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫
作例 · 標準
このアトリエは、私にとって創造に没頭できる自分だけの小天地だ。
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古い町並みの中で、古書店やカフェがひっそりと集まる一角は、まるで小天地のようだった。
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祖父の書斎は、古い本と趣味の品々で満たされた、彼にとっての小天地だった。
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