媼
ばば
名詞
標準
文例 · 用例
するとその豆腐の桶のある後が、蜘蛛の巣だらけの藤棚で、これを地境にして壁も垣もない隣家の小家の、炉の縁に、膝に手を置いて蹲っていた、十ばかりも年上らしいお媼さん。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
疾く白媼が家へ行かっしゃい、借がなくば、此処へ馬を繋ぐではないと、馬士は腰の胴乱に煙管をぐっと突込んだ。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
その間に、白媼の内を、私を膝に抱いて出た時は、髷を唐輪のように結って、胸には玉を飾って、丁ど天女のような扮装をして、車を牛に曳かせたのに乗って、わいわいという群集の中を、通ったですが、村の者が交る交る高く傘を※掛けて練ったですね。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
……ここから門のすぐ向うの茄子畠を見ていたら、影法師のような小さなお媼さんが、杖に縋ってどこからか出て来て、畑の真中へぼんやり立って、その杖で、何だか九字でも切るような様子をしたじゃアありませんか。
— 泉鏡花 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫
――ほんに、もうお十夜だ――気むずかしい治兵衛の媼も、やかましい芸妓屋の親方たちも、ここ一日二日は講中で出入りがやがやしておるで、その隙に密と逢いに行ったでしょ。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
第一、順と見えて、六十を越えたろう、白髪のお媼さんが下足を預るのに、二人分に、洋杖と蝙蝠傘を添えて、これが無料で、蝦蟇口を捻った一樹の心づけに、手も触れない。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
落葉のそよぐほどの、跫音もなしに、曲尺の角を、この工場から住居へ続くらしい、細長い、暗い土間から、白髪がすくすくと生えた、八十を越えよう、目口も褐漆に干からびた、脊の低い、小さな媼さんが、継はぎの厚い布子で、腰を屈めて出て来た。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫
何と、媼は頤をしゃくって、指二つで、目を弾いて、じろりと見上げたではないか。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫