荒れ庭
あれにわ
名詞
標準
文例 · 用例
そう紙を結んで、ポイと投げると、あの災難の晩、自分が穿いて来た、綺麗な鼻緒の駒下駄が、麗々しく、ごみだらけな床の間に飾ってあるのを持ち出して、突ッかけて、初冬の月が、どこかで淡く冷たい影を投げている荒れ庭を横切りはじめた。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
そして、次ぎに、そこが古寺の荒れ庭で、鈍い灯火に、照らされたあたりに、荒ごもが一枚布かれているのを見た。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
本所化物屋敷の荒れ庭に、血沫をあげて逆巻く十手の浪と左手の剣風……。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
夜は森沈として闇黒の色を深めてゆくだけで、樹々の影もこんもりと黒く狭霧がおりているのか、あんどんの余映を受けてぼやけた空気が、こめるともなく漂っているきり――いつも見慣れた、なんの変哲もない荒れ庭のけしきだ。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
」 とおうむ返しに源十郎が驚き、「さては、お藤めの意趣がえしであったか……」 左膳が同じく歯を噛んだちょうどそのときに、ビクビクもののつづみの与吉が、全身に汗をかいて荒れ庭の地を這い、ソウッと左膳の離室を遠ざかろうとしていた。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
そういう嘉門を送り迎えるのは、手広い荒れ庭の草や木であった。
— 国枝史郎 『娘煙術師』 青空文庫
道誉の影は、荒れ庭のすみに見える低い土倉の口へ呑まれるように消えていた。
— 世の辻の帖 『私本太平記』 青空文庫