湧き返る
わきかえる
動詞
標準
文例 · 用例
『ひどい囈言だ‥‥‥』と、私は水島の視線を避けながら、湧き返るやうな胸の混亂を抑へてかう呟いた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
すると渺々たる平原の尽くる下より、眼にあまるの舌は暗き大地を照らして咽喉を越す血潮の湧き返る音が聞えた。
— 夏目漱石 『趣味の遺伝』 青空文庫
例の黒い顔が湧き返る声に囲まれて過去の紀念のごとく華やかなる群衆の中に点じ出されていた。
— 夏目漱石 『趣味の遺伝』 青空文庫
人の海の湧き返る薄黒い倫敦で、朝な夕なに回り合わんと心掛ける甲斐もなく、眼を皿に、足を棒に、尋ねあぐんだ当人は、ただ一重の壁に遮られて隣りの家に煤けた空を眺めている。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
お常は只胸の中が湧き返るようで、何事をもはっきり考えることが出来ない。
— 森鴎外 『雁』 青空文庫
私は父の悲憤を眼にしますと、再び胸のうちが湧き返るような激怒を感じました。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
――たちまち拍手の声が一面に湧き返る。
— 夏目漱石 『野分』 青空文庫
このいらいらしい気持から遁れるには、湧き返る憤怒をそのまま、画絹へ投つけるより外にはありませんでした。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫