時借り
ときがり
名詞
標準
文例 · 用例
お妻が……言った通り、気軽に唄いもし、踊りもしたのに、一夜、近所から時借りの、三味線の、爪弾で……丑みつの、鐘もおとなき古寺に、ばけものどしがあつまりア…… ――おや、聞き馴れぬ、と思う、うたの続きが糸に紛れた。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
磯野が兄の取引き先から二十円三十円と時借りをした金の額の少くないことが、その時すっかり解った。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫
金は五十円たらずで、一時友達に立て替へるために若竹のお神に時借りしたものが還つて来たといふのであつた。
— 徳田秋声 『のらもの』 青空文庫
かれはすぐにまた飛び出して、近所の時借りなどを返してあるいた。
— 岡本綺堂 『放し鰻』 青空文庫
その晩、高瀬は隣の屋敷の方へ行って、一時借りている部屋で、東京の友人に宛てた手紙を書いた。
— 島崎藤村 『岩石の間』 青空文庫
クウネイには事情を明かして、電話と事務所を一時借りることにした。
— 牧逸馬 『アリゾナの女虎』 青空文庫
常ならば、たとえ一つでもそう擲らせておく米友ではないが、実際、この時は、もうどうしていいか思案に迷い切っていたが、急に決心したのは、どうなるものか、後で話はわからあ、力ずくでも、この馬を一時借りなけりゃならねえ、そうしなけりゃ恩人の命の危急なんだ。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
彼は、これらの「先生」から、「貰ふべきもの」と「一時借りたもの」とを、まだ同時にもつてゐるやうな気がする。
— 岸田國士 『アンリ・ルネ・ルノルマンについて』 青空文庫