覯
覯
名詞
標準
文例 · 用例
もう稀覯本になっているんだがね。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
と云うのは、その壁面を飾るものに、現在は稀覯中の稀覯ともいう銅版画で、一六六八年版の「倫敦大火之図」が掲げられているからだった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
しかも、もう稀覯に等しい一五三八年|里昂の初版なんだ」 それには、四十年後の今日に至って、黒死館に起った陰惨な死の舞踊を予言するかのように、明瞭とディグスビイの最終の意志が示されていた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
「然し、その所有は明らかに貴女へ帰すべきです」 法水の衣袋から、時価一千万円に価する稀覯本が取り出される刹那は、恐らく歴史的な瞬間でもあったし、また驚異と羨望とで、息吐く者もなかったであろう。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
若し貲を投じ盟に加はつてゐたら、立どころに希覯の書万巻を致さむことも、或は難きことを必とせぬであらう。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
維新後古本商頭取になり、後市会議員、市参事員、衆議院議員に選ばれ、鉄管事件に遭逢して引退し、月島に住んで古版本を蒐集するを楽とし、希覯の書数千巻を蔵するに至候。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
幕政中年々莫大の金を外国へ渡して買うた薬品は、済生上やむをえぬ事と言うたものの、その大部分は、当時永続の太平に慣れて放逸縦行した無数の人間が、補腎健春の妙薬としてしきりに黄白を希覯の曖昧品に投じたのである。
— 馬に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
実に人間に取ってこれほど大事の物なく、一七〇七年にオランダで出版したシャール・アンションの『閹人論』はジュール・ゲイの大著『恋愛婦女婚姻書籍目録』巻三に出るが、余が大英博物館で読んだアンションの『閹人顕正論』は一七一八年ロンドン刊行で、よほど稀覯の物と見え、右の目録にも見えぬ。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫