大森林
だいしんりん
名詞
標準
文例 · 用例
これはしかし吉田口の五合目から、富士に向って、左に路を取り、宝永山の火口壁から、その火口底へ下り、大宮方面の大森林に入って、大沢の嶮を越え、小御岳へ出るのが順で、始めて「大願成就」になるのだが、私は故あって、逆に山に向って右廻りをした。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
小御岳から、大沢へゆく間にも、「小御岳流れ」「大流れ」「白草流れ」が押しだして、大森林の一部分をブッ欠き、日当りのいい窓を明けて、欠け間から裾野にかけて、山麓の斜面を見せる。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
夜になると、こつちの岸と、向うの岸の半腹に、燈火が螢火のやうについて、神寂びた寺院の廻廊か、大森林の秘奥にともす法燈でもあるかのやうに、ひつそり閑となつて、その間に薬研のやうな天竜の大峡谷があるともおもはれない。
— 小島烏水 『天竜川』 青空文庫
といふのは目の前に大森林があらはれたので。
— 泉鏡太郎 『高野聖』 青空文庫
昔から、日本三大森林地の一つとして数へられてゐるやうであつて、昭和四年版の日本地理風俗大系にも、「そもそも、この津軽の大森林は遠く津軽藩祖為信の遺業に因し、爾来、厳然たる制度の下に今日なほその鬱蒼をつづけ、さうしてわが国の模範林制と呼ばれてゐる。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
自分がかつて北海道の深林で時雨に逢ったことがある、これはまた人跡絶無の大森林であるからその趣はさらに深いが、その代り、武蔵野の時雨のさらに人なつかしく、私語くがごとき趣はない。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
それがまたじつに武蔵野に一種の特色を与えていて、ここに自然あり、ここに生活あり、北海道のような自然そのままの大原野大森林とは異なっていて、その趣も特異である。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
陸の上に丸い波型に起伏する土丘のサルポセルカ、それに湛えられる大小無数の沼湖、雪原と大森林と渓谷と瀑流。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫