藍地
あいじ
名詞
標準
文例 · 用例
藍地に紺の立絞の浴衣を唯一重、絲ばかりの紅も見せず素膚に着た。
— 泉鏡太郎 『人魚の祠』 青空文庫
十九ばかりの品のあるお嬢さんが、しっとり寂しいほど、着痩せのした、縞お召に、ゆうぜんの襲着して、藍地糸錦の丸帯。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
が、こちらが餘りに何とも云つてやらなかつたので、立ちあがつて、左りの手に帳面とそろばんとを持ち、右の手で藍地の浴衣の前を直しながら、「まア、行つてやりましよう、子供が待つてるだらうから。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
近所の友達のもとへ遊びに行つたり、時々は義雄の總領むすめ富美子を連れ、雨に大きな笹の模樣を出した白地の縮みにメリンス友禪の帶を締め、藍地の絹張り蝙蝠傘をさし翳して、芝公園の中へ散歩に行き、氷水や氷汁粉をやつて來たりした。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
「どうです、もう一本、この藍地の手拭いを買っときなせえ、冬になったら何ぼになるだかわかりませんぜ、このホシはどうですえ、りっぱな紺だ、それからこの股引は、ね、釣が無えんだ仕方が無え、これで一両と負けとくさ」 阿賀妻は買物を一つかみに握って引きかえした。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
中には若い女の太股のあたりから下の立ち姿、――草葡萄のくすんだ藍地に太い黒の格子が入ったそれは非常に地味な着物であったが、膝頭のあたりから軽く自然に裾をさばいて、これは又眼も醒めるばかり真紅の緋縮緬を文字通り蹴出したあたりに、白い蝋の様なふくら脛がチラリと覗いている。
— 海野十三 『白蛇の死』 青空文庫
浅黒い棗形の素子の白粉気のない顔は、酔ってあか黒く脂が浮いて見え、藍地に白でぽってり乱菊を刺繍した桃龍の半襟の濃艶な美しさは、素子の表情のにぶくなった顔を、ひときわ醜くした。
— 宮本百合子 『二つの庭』 青空文庫
みのるはその汗になつた薄藍地の浴衣の袂で顏を拭ひながら、この十餘日の間の自分を振返つて見た。
— 田村俊子 『木乃伊の口紅』 青空文庫