実々
じつじつ
名詞
標準
文例 · 用例
しばらく虚々実々、無言にして、天体の日月星辰を運行る中に、新生の惑星が新しく軌道を探すと同じ叡智が二人の中に駈け廻った。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
豹吉を取り巻いている隼団の連中を兵古帯のお加代をはじめ青蛇団の連中が取巻き、龍太の拳銃とお加代の拳銃が虚々実々の阿※の呼吸をはかりながら、今にも火花を散らそうとしていた。
— 織田作之助 『夜光虫』 青空文庫
新聞社同志の虚々実々の駆引きは勿論である。
— 織田作之助 『聴雨』 青空文庫
」と穏に云いながら柳沢は老実々々しく、卓子の上に両方からつないで下げた電燈の火屋の結目を解いたが、堆い書籍を片手で掻退けると、水指を取って、ひらりとその脊の高い体で、靴のまま卓子の上に上って銅像のごとく突立った。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
女乞食の掘出しもの、恩に感じて老実々々しく、陰陽なく立働き、水も汲めば、米も磨ぎ、御膳も炊けば、お針の手も利き、仲働から勝手の事、拭掃除まで一人で背負って、いささかも骨を惜まず。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
雨降れば五六里の山道を伝ひて博多に出で、世上の風評を聞き整へ、種々の買物のほかに奈美女の好む甘き菓子、珍らしき干物、又は何処より手に入れ来るやらむ和蘭の古酒なんどを汗みづくとなりて背負ひ帰るなんど、その忠実々々しさ。
— 夢野久作 『白くれない』 青空文庫
ここで成る程と早くも膝を打たれる人はやがてこの「心」と「鼻」とが如何に密接な「表現の関係」を持っているかという事を、如々実々に了解されるお方であります。
— 夢野久作 『鼻の表現』 青空文庫
斬り合いの描写の変遷を見るのに、江戸時代の文学の、斬り合いの描写といえば、所謂、「丁々発止、虚々実々の云々」の流儀に定っていたものであった。
— 直木三十五 『大衆文芸作法』 青空文庫