薄氷
はくひょう異読 うすごおり
名詞
標準
thin ice
文例 · 用例
水鳥や舟に菜を洗ふ女あり と共に、蕪村の好んで描く水彩画風の景趣であって、薄氷のはる冬の朝の侘しさがよく現れている。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
彼女は薄氷の上に立たされる思ひで生活してゆかなければならなかつた。
— 梶井基次郎 『川端康成第四短篇集「心中」を主題とせるヴァリエイシヨン』 青空文庫
薄氷を踏むような吉田の呼吸がにわかにずしりと重くなった。
— 梶井基次郎 『のんきな患者』 青空文庫
蔦をその身に絡めたるまま枯木は冷然として答えもなさず、堤防の上につと立ちて、角燈片手に振り翳し、水をきっと瞰下ろしたる、ときに寒冷|謂うべからず、見渡す限り霜白く墨より黒き水面に烈しき泡の吹き出ずるは老夫の沈める処と覚しく、薄氷は亀裂しおれり。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
自分の家族は、女性のほうが男性よりも数が多く、また親戚にも、女の子がたくさんあり、またれいの「犯罪」の女中などもいまして、自分は幼い時から、女とばかり遊んで育ったといっても過言ではないと思っていますが、それは、また、しかし、実に、薄氷を踏む思いで、その女のひとたちと附合って来たのです。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
ところが、つい一月ほど前、夫婦でスケイト遊びの最中に細君は過つて薄氷の割れ目に落ち込み、幸ひ老人の手に救ひ上げられたが、その時足をひどく挫いたのだつた。
— ――スウェーデンの殺人鬼―― 『死の接吻』 青空文庫
義妹も、かえって私たちには遠慮をして、ずいぶん子供たちの世話もしてくれて、いちども、いやな正面衝突など無かったが、しかし、私たちには「家を喪った」者のヒガミもあるのか、やっぱり何か、薄氷を踏んで歩いているような気遣いがあった。
— 太宰治 『薄明』 青空文庫
このごろは、全く、用心して用心して、薄氷を渡る気持で生活しているのである。
— 太宰治 『懶惰の歌留多』 青空文庫
作例 · 標準
凍った池の薄氷の上を歩くのは危険だ。
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彼の経営はまさに薄氷を踏む思いで、常に危機と隣り合わせだった。
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この繊細な交渉は、薄氷の上に立つようなものだった。
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