稍々
稍々
名詞
標準
文例 · 用例
遉に現在の耕二を話題にすれば、そこに集つた人達も空想の悲哀を、茫然ながら感じないで済むものとみえて、稍々沈んだ調子で話されてゐた。
— 中原中也 『耕二のこと』 青空文庫
稍々あつて男――もう今では夫、入口より葉巻を銜へ、長きマントの儘、如何にも寒い中を歩いて帰つて来た風である。
— 中原中也 『夢』 青空文庫
そして稍々暗くなった。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
中津はひげ面のひげを青く剃り、稍々ちゞれる癖のある、ほこりをかむった渦まける髪をきれいに梳って、油の臭いをプンプンさしていた。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
小柄でいながら確りした肉付の背中を持っていて、稍々左肩を聳やかし、細そりした頸から顔をうつ向き加減に前へ少し乗り出させながら、とっとと歩いて行く。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
むす子は稍々内足で学生靴を逞しくペーヴメントに擦り叩きながら、とっとと足ののろい母親を置いて行く。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
これ等の場所は普通武蔵野の名所と云われている感どころより、稍々外れて、しかも適確に武蔵野の情趣を探らせて呉れるだけに、かの女には余計味わい深かった。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
その室内で非常に目立つ一つのものは、ちょっと見ては何処の国の型かも判らない大型で彫刻のこんだ寝椅子が室の一隅に長々と横はり、その傍の壁を切ったような通路から稍々薄暗い畳敷きの日本室があり、あっさりと野菊の花を活けた小さな床があった。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫