唯さえ
たださえ
副詞
標準
even at the best of times
文例 · 用例
かれは固より記憶していなかったが、唯さえ静かな家中がしんとして、夜ももう余ほど更けているらしいと思う頃に、次の間の畳を滑るような足音が微かに響いた。
— 奥女中 『半七捕物帳』 青空文庫
どこか屋根の上に隠れて止まっていた一群の鳩が、驚いて飛び立って、唯さえ暗い中庭を、一|刹那の間、一層暗くした。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
そうして一群の鳩が、驚いて飛び立って、唯さえ暗い中庭を、一刹那の間、一層暗くしたというのも、まさに、そのとおりで、原作者は、女のうしろに立ってちゃんと見ていたのであります。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
どこか屋根の上に隠れて止まっていた一群の鳩が、驚いて飛び立って、唯さえ暗い中庭を、一刹那の間、一層暗くした。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
唯さえ蒼白い顔は藍のように変わってしまって、ただ黙ってうつむいていると、やがて吉五郎はじろりと見かえって、「若けえ人に飛んだお下物を見せたが、おめえはあの女を知っているかえ。
— 岡本椅堂 『子供役者の死』 青空文庫
唯さえ苦しいこの呼吸が絶え入るまで、ハンカチを絞って泣きましたことで御座いました。
— 夢野久作 『押絵の奇蹟』 青空文庫
彼女が後へ残して行った長い長い悲哀は、唯さえ白く成って来た大塚さんの髪を余計に白くした。
— 島崎藤村 『刺繍』 青空文庫
唯さえ遅い筆ですのに、眼鏡を掛けて細いものを見詰めていますと、どうも疲れがひどいように思います。
— 上村松園 『帝展の美人画』 青空文庫