枝々
えだえだ
名詞
標準
文例 · 用例
……トこの奇異なる珍客を迎うるか、不可思議の獲ものに競うか、静なる池の面に、眠れる魚のごとく縦横に横わった、樹の枝々の影は、尾鰭を跳ねて、幾千ともなく、一時に皆揺動いた。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
枝々のなかの水田の水がどむよりして淀むで居るのに際立つて真白に見えるのは鷺だつた、二羽一処にト三羽一処にト居てそして一羽が六|尺ばかり空へ斜に足から糸のやうに水を引いて立つてあがつたが音がなかつた、それでもない。
— 泉鏡花 『化鳥』 青空文庫
木戸には桜の造花を廂にさして、枝々に、赤きと、白きと、数あまた小提灯に、「て。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
青森県といふ名もそこから起つたのではないかと思はれるほど、津軽の山々には樹木が枝々をからませ合つて冬もなほ青く繁つてゐる。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
小さい並木路を下るときには、振り仰いで新緑の枝々を眺め、まあ、と小さい叫びを挙げてみて、土橋を渡るときには、しばらく小川をのぞいて、水鏡に顔をうつして、ワンワンと、犬の真似して吠えてみたり、遠くの畠を見るときは、目を小さくして、うっとりした風をして、いいわねえ、と呟いて溜息。
— 太宰治 『女生徒』 青空文庫
紅梅は花が散ってしまっていて青青した葉をひろげ、百日紅は枝々の股からささくれのようなひょろひょろした若葉を生やしていた。
— 太宰治 『彼は昔の彼ならず』 青空文庫
その主なるものを茲に紹介すれば、 階下==玄関衝立代りとして、漆塗り大船型の器に截り据ゑた松の大幹、その枝々に揺れる藤浪。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫
それはちょっと言葉で表わすことのむつかしい夢のようなものであるが、たとえば、深く降り積もった雪の中に一本大きなクリスマス・トリーが立っていてそれに、無数の蝋燭がともり、それが樅の枝々につるしたいろいろの飾りものに映ってきらめいている。
— 寺田寅彦 『詩と官能』 青空文庫