訥弁
とつべん
形容動詞名詞-の形容詞名詞
標準
slowness of speech
文例 · 用例
これを何と形容したら適当であるか、例えばここに饒舌な空談者と訥弁な思索者とを並べた時に後者から受ける印象が多少これに類しているかもしれない。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
饒舌の雄弁|固より悪くはないかもしれぬが、自分は津田君の絵の訥弁な雄弁の方から遥かに多くの印象を得、また貴重な暗示を受けるものである。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
元来僕は訥弁で自分の思って居ることが云えない性だから、英語などを訳しても分って居乍らそれを云うことが出来ない。
— 夏目漱石 『落第』 青空文庫
肉体まずしく、訥弁である。
— 太宰治 『パウロの混乱』 青空文庫
これに反して、文士でも芸術家ないし芸人でも何か一つ腹に覚えのある人の講演には訥弁雄弁の別なしに聞いていて何かしら親しみを感じ、底のほうに何かしら生きて動いているものを感じるから妙なものである。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫
冗談だとか、徒らな嘲笑などゝかの場合には人一倍お喋舌りな癖にして、いざとなると恰で訥弁で、同じことばかし繰り反してゐる。
— 牧野信一 『妄想患者』 青空文庫
然し当人は無論一切御存じなし、破鐘の欠伸する様な訥弁は一歩を進めた。
— 石川啄木 『雲は天才である』 青空文庫
浮世の塩を踏まぬ身の気散じさ、腕押、坐相撲の噺、体操、音楽の噂、取締との議論、賄方征討の義挙から、試験の模様、落第の分疏に至るまで、凡そ偶然に懐に浮んだ事は、月足らずの水子思想、まだ完成ていなかろうがどうだろうがそんな事に頓着はない、訥弁ながらやたら無性に陳べ立てて返答などは更に聞ていぬ。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫