非運
ひうん
名詞
標準
文例 · 用例
国にもしかかる「愚かなる智者」のみありて、ダルガスのごとき「智き愚人」がおりませんならば、不幸一歩を誤りて戦敗の非運に遭いまするならば、その国はそのときたちまちにして亡びてしまうのであります。
— 信仰と樹木とをもって国を救いし話 『デンマルク国の話』 青空文庫
桂正作は武士の子、今や彼が一家は非運の底にあれど、ようするに彼は紳士の子、それが下等社会といっしょに一膳めしに舌打ち鳴らすか、と思って涙ぐんだのではない。
— 国木田独歩 『非凡なる凡人』 青空文庫
そして雲はなにかそうした安逸の非運を悲しんでいるかのように思われるのだった。
— 梶井基次郎 『蒼穹』 青空文庫
」伏して昭穆を案ずるに、将門は已に栢原帝王五代之孫なり、たとひ永く半国を領するとも、豈非運と謂はんや。
— 幸田露伴 『平将門』 青空文庫
ところがその時、生れてはじめて海戦というものを目撃した――そのわれわれに、誰が、一週間後になって非運が訪れようと信じられたでしょうか。
— 小栗虫太郎 『潜航艇「鷹の城」』 青空文庫
只今のように大阪方非運の場合、左様の事は思いも及ばない。
— 菊池寛 『大阪夏之陣』 青空文庫
誰か彼を以て激情のために非運の最期を遂げたる一薄倖児と云ふ者あらむや。
— 石川啄木 『渋民村より』 青空文庫
実世界は強大なる勢力なり、想世界は社界の不調子を知らざる中にこそ成立すべけれ、既に浮世の刺衝に当りたる上は、好しや苦戦搏闘するとても、遂には弓折れ箭尽くるの非運を招くに至るこそ理の数なれ。
— 北村透谷 『厭世詩家と女性』 青空文庫