鼠入らず
ねずみいらず
名詞
標準
ratproof cupboard
文例 · 用例
簿記函と書た長方形の箱が鼠入らずの代をしている、其上に二合入の醤油徳利と石油の鑵とが置てあって、箱の前には小さな塗膳があって其上に茶椀小皿などが三ツ四ツ伏せて有る其横に煤ぼった凉炉が有って凸凹した湯鑵がかけてある。
— 国木田独歩 『二少女』 青空文庫
ともちゃんが家を出ようとすると、お母さんが「ともや、ここにこんなものが取ってあるから食べておいでな」といって、鼠入らずの中から、ラーヴェンダー色のあんこと、ネープルス・エローのきなこと、あのヴェラスケスが用いたというプァーリッシ・グレーの胡麻……戸部うなり声を立てる。
— 有島武郎 『ドモ又の死』 青空文庫
下女はお上さんがあんなでは困ると、口小言を言いながら、下手の乗っている馬がなまけて道草を食うように、物事を投遣にして、鼠入らずの中で肴が腐ったり、野菜が干物になったりする。
— 森鴎外 『雁』 青空文庫
おくみは鼠入らずを開けて、いろんな鑵や蓋物なぞを開けて見た。
— 鈴木三重吉 『桑の実』 青空文庫
何を騒いでいるかと耳を立てると、案の条、鼠入らずの中の刺身がなくなっていることを問題にしているらしく、「あの畜生だ、あの泥棒猫の仕業だ」と怒っている。
— 猫と鼠のはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
と順吉はいひ、さういふときおちかは茶の間の片隅にちやぶ臺を据ゑて支度をしてやりながら、鼠入らずのあけたての音にさへひさに氣兼ねであつた。
— 島木健作 『第一義の道』 青空文庫
新吉がどこからか格安に買って来た手箪笥や鼠入らずがツヤツヤ光って、着物もまず一と通り揃った。
— 徳田秋声 『新世帯』 青空文庫
で、鼠入らずももうなくなった。
— ――獄中手記―― 『何が私をこうさせたか』 青空文庫