飛去
ひきょ
名詞
標準
文例 · 用例
鳥はおどろきてはたはたと飛去りぬ。
— 泉鏡花 『竜潭譚』 青空文庫
翡翠は光のやうに飛去り、川烏は電報配達夫のやうな一直線。
— 梶井基次郎 『闇への書』 青空文庫
さうだのに、この瑠璃は終日溪を飛去らず、自ら自らの聲をたのしんでゐるやうに永い午後の倦怠を歌つてゐる。
— 梶井基次郎 『闇への書』 青空文庫
このくの字なりの木片は、御覧の通り飛去来器(いわゆる『飛んで来い』という玩具)です。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
皆さん、こうして私は、硝子盤の後方に、光るものを証明することが出来たのですが、さてその光源が何処にあったかというと、それは幾つかの硝子窓を隔てた、兼常博士の室だったのです」 そして、法水が飛去来器と紙製の球体を取り出したのを見ると、杏丸は顔を伏せ、焦だたし気に爪を噛み始めた。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
法水は続けて、「実は、この二つのものが、博士の室の対岸にある、杏丸氏の実験室から発見されたのですが、投げた手許に再び戻って来る、飛去来器の性能を考えると、どうしても、杏丸氏に疑惑をかけざるを得ません。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
そうすると、膜嚢に有毒気体を充たしたものを孔につめて、弾殻には極く力の弱い煙硝を使い、そして、飛去来器に噛ませて、それを飛ばせたとすれば、適当な場所で煙硝の燃焼から飛び出した膜嚢が、恐らく死因不明の即死を起させやしないでしょうか。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
勿論、弾殻は飛去来器に伴って、再び手許に戻って来るのですが、その時の火花が、幾つかの硝子窓を通って、屍蝋室の硝子盤に映じたのです」 その瞬間杏丸に向けて、何やら含んでいそうな視線が、一斉に注がれた。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫