淡赤
たんせき
名詞
標準
文例 · 用例
一歩、一歩、杖の音におどろき、足の音に驚いて、引きずった着物の裾につまづきながら、現のやうに歩いて窓際によったけれども、涙は幻のやうに彼女の瞳をつゝんで、淡赤い月の行方をお葉は見る事が出来なかった。
— 素木しづ 『青白き夢』 青空文庫
ふと池の向ひの木立の蔭に淡赤い電燈の影が、月暈のやうな円を描いて、庭木や草の上に蒼白く反映してゐるのが目についたが、それは隠居所のやうな一|棟の離房で、瓦葺の高い二階建であつた。
— 徳田秋聲 『或売笑婦の話』 青空文庫
毛白くして淡赤なり。
— 猪に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
客のマッサージをすませたお柳の身体から、石鹸の泡が滴ると、虎斑に染った蜘蛛の刺青が、じくじく色を淡赤く変えつつ浮き出て来た。
— 横光利一 『上海』 青空文庫
元気を出して、立派な赤ちゃん、生んでちょうだい」 透きとおるように蒼白くなった茜さんの頬が、昂奮のいろで淡赤く染まる。
— 新しき出発 『キャラコさん』 青空文庫
興津だいという甘だいとぐじといっている日本海の甘だいとは一見同じものだが、色が若狭ものは淡赤く桃色であり、興津だいと称する甘だいは通常のたいと同じくらい赤色を呈している。
— 北大路魯山人 『甘鯛の姿焼き』 青空文庫
六 芝口の路地――花嫁の駕籠を入れたというあたりを捜し当てた平次と八五郎は、提灯を振り照らして念入りに調べて見ましたが、血潮の跡は愚か、守り刀の鞘についた、淡赤い泥に似寄りのものもありません。
— 死骸の花嫁 『銭形平次捕物控』 青空文庫
六 芝口の路地――花嫁の駕籠を入れたといふあたりを搜し當てた平次と八五郎は、提灯を振り照らして念入りに調べて見ましたが、血潮の跡は愚か、守り刀の鞘についた、淡赤い泥に似寄りのものもありません。
— 死骸の花嫁 『錢形平次捕物控』 青空文庫