懌
懌
名詞
標準
文例 · 用例
さすがの燕王も心に之を悪みて色|懌ばず、風声雨声、竹折るゝ声、樹裂くる声、物凄じき天地を睥睨して、惨として隻語無く、王の左右もまた粛として言わず。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
我心は一物に逢ふごとに、その高尚と美妙との方面よりして強く刺戟せられ深く悦懌す。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
所詮周三がお房を懌ぶ意味が違つて、一|個の物體が一|人の婦となり、單純は、併し價値ある製作の資|料が、意味の深い心の糧となつて了つた。
— 三島霜川 『平民の娘』 青空文庫
さて事果てて後、還つて先生を見ると、先生は色|懌ばざる如くであつた。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
まえにも云う通り、小左衛門は手堅い人物であるので、ふだんから自分の手習い子が遊芸の稽古所などへ通うのをあまり懌ばないふうであった。
— 半七先生 『半七捕物帳』 青空文庫
五尺の男子、空しく児女の啼を為すとも、父の霊|豈懌び給わんや。
— 岡本綺堂 『父の墓』 青空文庫
宮は懌べる気色も無くて、彼の為すに任するのみ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
「そんな捫懌最中に、狭山さんの方が騒擾に成りましたんで、私の事はまあどうでも、ここに三千円と云ふお金が無い日には、訴へられて懲役に遣られると云ふんですから、私は吃驚して了つて、唯もう途方に昧れて、これは一処に死ぬより外は無いと、その時|直にさう念つたんで御座います。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫