来越
らいえつ
名詞
標準
文例 · 用例
冨山房の仮営業所が九段下にあった時分、一日訪問された下田次郎先生が、そこの三階の窓から往来越しに、前の精華女学校の大きな建物をながめられて、「あれは寺田勇吉君の置きみやげのようなものだが、一度建てた学校はすたらないものだね」といわれたことが思い出される。
— 楠山正雄 『神田界隈』 青空文庫
時によると鉢植の薔薇や百合の花を折つて、往来越しにこちらの窓へ投げてよこす事もある。
— 芥川龍之介 『窓』 青空文庫
店の低い軒下に立って往来越しに見ていると、むこうの杉林のあたりまで一面水がついて、麦の穂だけが蘆のように雨脚に揺れた。
— 宮本百合子 『その年』 青空文庫
だまって、じっとしていたい心持になっている伸子は、往来越しに向い側の建物のてっぺんにある露台が見えるディヴァンの上で、おもちゃの白い猿を片方の腕に抱いてよこになっていた。
— 宮本百合子 『道標』 青空文庫
シャツ一枚に猿股で沢田の主人が、往来越しにざぶざぶ水をこいで土間に入って来た。
— 宮本百合子 『播州平野』 青空文庫
一方、群集のほうでは、矢来越しに遠見なので、こうした事情が、そこに起っているとはわからない。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
こちらは見物させていただきますのさ」 と、車の上に登って、矢来越しに手をかざし合っている。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫
お蔭に依って、以来越後に帰国、こうして御奉公しています」「いやいや、お礼など、かえって迷惑じゃ。
— 吉川英治 『上杉謙信』 青空文庫