油鍋
あぶらなべ
名詞
標準
文例 · 用例
大東京のホルモンを皆よせあつめて来たかのような精力的な新開地、わが新宿街は、さながら油鍋のなかで煮られているような暑さだった。
— 海野十三 『麻雀殺人事件』 青空文庫
火事は北棟の庖厨場で、油鍋でもひっくりかえしたのだとみえ、猛烈な炎が板壁をつたわって屋根へ燃えぬけようとしているところだった。
— 久生十蘭 『フランス伯N・B』 青空文庫
のみならず、岩間岩間や地の下に隠れていた薬線に火がつくと、さしも広い谷間も、須臾にして油鍋に火が落ちたような地獄となってしまった。
— 出師の巻 『三国志』 青空文庫
悪くすれば、彼の希いも逆に、油鍋へ火を投じたような結果にもなりかねない形勢とはなっていた。
— みなかみ帖 『私本太平記』 青空文庫
また一夕、人に招かれて銀座のハゲ天の奥に坐ると、白い割烹着で座敷天ぷらの長箸を使いながらハゲ天氏がしみじみと「義仲って者も、なんて可哀そうなんでしょうなア」と、油鍋の中の音と一しょにつぶやいた。
— 吉川英治 『随筆 新平家』 青空文庫