焼き刃
やきば
名詞
標準
文例 · 用例
いずれにしても著者の腹にない付け焼き刃の作物では科学的にはもちろん、文学的にもなんらの価値がありようはないのである。
— 寺田寅彦 『科学と文学』 青空文庫
人間はどうかすると未熟な科学の付け焼き刃の価値を過信して、時々鳥獣に笑われそうな間違いをして得意になったり、生兵法の大けがをしてもまだ悟らない。
— 寺田寅彦 『沓掛より』 青空文庫
そうして付け焼き刃の文明に陶酔した人間はもうすっかり天然の支配に成功したとのみ思い上がって所きらわず薄弱な家を立て連ね、そうして枕を高くしてきたるべき審判の日をうかうかと待っていたのではないかという疑いも起こし得られる。
— 寺田寅彦 『天災と国防』 青空文庫
その中には古刀と新刀の歴史が図でわかるように説き明かしてありましたが、それぞれの流儀のちがいと言いますか、図にあらわれた焼き刃の模様がちょうど海の岸に寄せてはかえる潮の花の紋のように見えました。
— 島崎藤村 『力餅』 青空文庫
焼き刃の模様ほど刀鍛冶の気質をよくあらわすものもありません。
— 島崎藤村 『力餅』 青空文庫
ますらをのため※間十次郎光興血つきたる槍ひきさげて、落ちくさの柴のかくれが 我ぞ さぐりし※近松勘六行重母剣太刀 焼き刃に 我と身をふれて、励ましやりつ。
— 折口信夫 『橘曙覧評伝』 青空文庫
「もし本当に人間が、人間が全体に、つまり一般人類が卑劣漢でないとしたら、ほかのことはすべて偏見だ、つけ焼き刃の恐怖だ。
— フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー 『罪と罰』 青空文庫
威厳も自分の身から出たものでないと、一向身に付かないもので、付け焼き刃の威厳の持主は、その目つきが不安そうにキョロキョロするものである。
— 戸坂潤 『社会時評』 青空文庫