棄鉢
棄鉢
名詞
標準
文例 · 用例
そして、何か云われたのに、二円五十銭ずつ二回に払ったのですが、と答えたときの自分自身の見えすいた狡さのために、自らをひくくしたはずかしさと棄鉢をおぼえました。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
」といって、愛吉はフンと棄鉢の鼻息。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
まして棄鉢に目を眠った処を、裾からずるずると引張るから、はあ、こりゃおいでなすったかい。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
あの棄鉢な気紛れものと、この姉さんでなくッちゃ、当節では出来ない仕事。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
誰に向けられるともないその腹立たしさが、じつはなかば棄鉢になっている自分自身に向けられているということを彼自身は知る由もなかった。
— 島木健作 『鰊漁場』 青空文庫
悔恨と、むしゃくしゃした腹立ちと、同時に図太い棄鉢的な考えとが、ひとつになってぐるぐると胸のなかをかけめぐった。
— 島木健作 『鰊漁場』 青空文庫
導かれて部屋にはいり、机をへだててそこに坐つた眼の鋭い洋服男の顏を、やや棄鉢な氣持で下から見上げた。
— 島木健作 『一過程』 青空文庫
どこか船で渡るような遠い外国へ往って、労働者の群へでも身を投じようかなどと、棄鉢な空想に耽ったりした。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫