振り振り
ふりふり
名詞
標準
文例 · 用例
かっぽれは、それこそ親獅子のふところにかき抱かれている児獅子というような形で、顔を振り振り泣きじゃくり、はっきり聞きとれぬような、ろれつの廻らぬ口調で、くどくどと訴えはじめた。
— 太宰治 『パンドラの匣』 青空文庫
」と首を振り振り言って、僕が自席にかえってからも、僕の顔を、しげしげ眺めて、「教員室でも、みんなお前を可愛いと言ってるぜ。
— 太宰治 『正義と微笑』 青空文庫
完全に裸体で豊満な肉体をもった黒髪の女が腕を組んだまま腰を振り振り舞台の上手から下手へ一直線に脇目もふらず通り抜けるというものすごい一景もあった。
— 寺田寅彦 『マーカス・ショーとレビュー式教育』 青空文庫
海岸をステッキ振り振り散歩すれば、海も、雲も、船も、なんだかひと癖ありげに見えて胸がおどるのだった。
— 太宰治 『断崖の錯覚』 青空文庫
そうして、青大将の顔に似た顔つきの、丸坊主のおやじが、首を振り振り、いかにも上手みたいにごまかしながら鮨を握っている様も、眼前に見るように鮮明に思い出され、後年、電車などで、はて見た顔だ、といろいろ考え、なんだ、あの時の鮨やの親爺に似ているんだ、と気が附き苦笑した事も再三あったほどでした。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
驢馬は小さい胴体や、短かい四本の脚に似合わず、大きい頭を、苦るしげに振り振り、六頭が、六頭とも汗だくだくとなっていた。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
一カ月の後、彼女は、別の、色の生白い、ステッキを振り振り歩く手薄な男につれられて、優しく低く、何事かを囁きながら、S町への大通りを通っていた。
— 黒島傳治 『浮動する地価』 青空文庫
大な日和下駄の傾いだのを引摺って、――まだ内弟子の小僧ゆえ、身分ではござりませんから羽織も着ませず……唯今頃はな、つんつるてんの、裾のまき上った手織縞か何かで陰気な顔を、がっくりがっくりと、振り振り、(ぴい、ぷう。
— 泉鏡花 『怨霊借用』 青空文庫