山寄り
やまより
名詞
標準
文例 · 用例
一つは山寄りの道を辿るのと、一つは海を越えて廻って行く道とであった。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
山寄りの道を行く方が山の岳神を探すに便利は多いようなものの、それ等の山は多く未開の山で、ちょっと人に訊いただけでも、山の主は、百足であるとか、猿であるとか、鷲であるとか、気の利いた山の神ではなかった。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
伊豆山寄りの崖の上に西洋風のホテルが出来て物珍らしく、日曜にはダンス会が開かれるといふので、彼女は切りと私を誘ふのであつたが、二度も偶然に酔払つた阿父と出遇ひ、「山小屋の、へつぽこハムレツトが来やがつた。
— 牧野信一 『熱海線私語』 青空文庫
いつも見慣れた景色とは思はれない程に、どちらの山々も緑色を示してゐる……」 停車場から、山寄りの梅林ちかくの私の家まで可成りの道程であつた。
— 牧野信一 『タンタレスの春』 青空文庫
山寄りの小高い寺の建物は、ここには似合わぬくらいの宏壮さである。
— 矢田津世子 『茶粥の記』 青空文庫
何でも明治三十年代に萩野半之丞と言う大工が一人、この町の山寄りに住んでいました。
— 芥川龍之介 『温泉だより』 青空文庫
急に私達の前が明るくなって、其処には山寄りに一軒、ちょっとした小屋が閉されたまま立っていた。
— 堀辰雄 『晩夏』 青空文庫
すっかり雪に埋もれた軽井沢に着いた時分には、もう日もとっぷりと暮れて、山寄りの町の方には灯かげも乏しく、いかにも寥しい。
— 堀辰雄 『雉子日記』 青空文庫