銀扇
ぎんせん
名詞
標準
silver-colored folding fan (coloured)
文例 · 用例
さらばしかと預けたぞよ」 さむらいは銀扇をパッと開いて感服しましたが、六平は余りの重さに返事も何も出来ませんでした。
— 宮沢賢治 『とっこべとら子』 青空文庫
庭の表面にただよう月光の照り返えしが、不意に室内に銀扇を展げた形に反映した。
— ――二つの連作―― 『春』 青空文庫
銀扇が舞姫の手からすべり落ちたかのやうに、雨は忘れられて居た。
— 牧野信一 『秋雨の絶間』 青空文庫
折しも、通りすがった二人づれ――対の黄八丈を着て、黒繻子に緋鹿の子と麻の葉の帯、稽古帰りか、袱紗包を胸に抱くようにした娘たちが、朱骨の銀扇で、白い顔をかくすようにして行く、女形を、立ち止って見送ると、「まあ、何という役者でしょう?
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
「人のいのちは、いつ尽きるか分らぬもの――そなたの大望、早う遂げねば、悔ゆることがあろうよ」 女形は、右の手に持っていた銀扇を、帯の間に――そのかわりに、どうやら護り刀の柄に、そっと、その手を掛けたかのよう――四辺を見まわして、ツカツカと、声のする方へ行った。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
如何にもあの時の、わたしの構えは、あの刀が振り下ろされたら、躱したと見せて、咽喉元を、銀扇の要で、突き破ってやるつもりだった。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
そして、彼女等の視線は、あからめもせず、半開きにした銀扇で、横がおを蔽すようにした雪之丞の、白く匂う芙蓉の花のようなおもばせにそそがれているのだ。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
屋根船を綾瀬川まで漕ぎ上せて、静かな月と静かな波の映り合う真中に立って、用意してある銀扇を開いたまま、夜の光の遠くへ投げるのだと云うじゃありませんか。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫