薄曇る
うすぐもる
動詞
標準
文例 · 用例
ある時は又氣温が急にゆるんで空が春らしく薄曇る。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
」 とただ懐かしげに嬉しそうにいう顔を、じっと見る見る、ものをもいわず、お民ははらはらと、薄曇る燈の前に落涙した。
— 泉鏡花 『女客』 青空文庫
「人に聞かれたのでは極りが悪いね……」 西明寺を志して来る途中、一処、道端の低い畝に、一叢の緋牡丹が、薄曇る日に燃ゆるがごとく、二輪咲いて、枝の莟の、撓なのを見た。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
今まで花のような模様を描いて、海面のところどころに日光を恵んでいた空が、急にさっと薄曇ると、どこからともなく時雨のような霰が降って来て海面を泡立たす。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
水は、はた、ゆるく噴きいで、薄曇る不斷の息に、月影と空とをまぜて、夢の如く節もかはらず。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
河上から折々雲が颪して来て、谷の空気が潮の退くように仄に薄曇ると、濃藍色をした深い上流の山の端から、翠の影がさっと谷間を流れて、体がひやりと冷たくなる。
— 木暮理太郎 『釜沢行』 青空文庫
薄曇る日はどんみりと霜をれて 乙州 鉢いひ習ふ声の出かぬる 珍碩染めてうき木綿袷のねずみ色 里東 撰りあまされて寒き明ぼの 探志 この一聯の前の二句は、初心の新発意が冬の日に町に出て托鉢をするのに、まだ馴れないので「はち/\」の声が思い切って出ない。
— 柳田国男 『木綿以前の事』 青空文庫