溯
溯
名詞
標準
文例 · 用例
奈良朝にいたって、はじめてかような資料が比較的豊富に得られるのであるから、第一期の音韻を研究しようとするには、どうしても先ず奈良朝のものについてその時代の音韻組織を明らかにし、これを基礎として、それ以前の時代に溯るのほかないのである。
— 橋本進吉 『国語音韻の変遷』 青空文庫
この傾向を逆に見れば、もっと古い時代に溯れば、更に多くの音があったのが、時代の下ると共に他の音と同音になって遂に奈良朝におけるごとき八十七音になったのではあるまいかと思われる。
— 橋本進吉 『国語音韻の変遷』 青空文庫
しかし五十の音を言い分けるということは、神代はどうだか知りませぬけれども、我々が普通溯ることが出来る時代――これはまあ実際においては大体|推古天皇までぐらいであろうと思います。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
それより以前は、その辺からずっと眺め渡すことが出来るかも知れませぬけれども、直接に知るということはむずかしいのであります――先ず推古天皇の頃まで溯っても、五十の音がことごとく別々に使われ言い分けられておったということはなかったと思うのであります。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
ところがこれを逆に溯って行くと、『古事記』になりますと「モ」にも二類の区別があって、それが奈良朝においては、もはやその区別が認められないのであります。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
それよりもっと古く溯ればどうかというと、それは推古天皇時代のものが幾らか遺っているのでありますが、この時代のものに右のような仮名の使いわけがあるかどうかは、それだけは明瞭に判りませぬ。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
私たちの、これから溯ろうという、東俣の谷と、西俣の谷とは、下流三里のところで一つになり、初めて田代川――馬子唄で名の高い、海道一の大井川の上流――となって、西南の方向へと、強い傾斜を走って行くのである。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
七月の炎天も、この谷間までは迫って来ないと見えて、白剥山を一つ超えて、東俣の谷へ来ると、未だ若葉、青葉の新緑が、生々しかったが、ここまで溯ると、濶葉、細葉は、透明を含んだ、黄の克った、明るみのある嫩い緑で、霧の雫にプラチナのように光った裏葉を翻えしている。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫