敢
敢
名詞
標準
文例 · 用例
吾輩は敢て驚きたいとも思はないが、強て驚きたくないと猶更勉めたくはない。
— 伊藤左千夫 『『悲しき玩具』を読む』 青空文庫
「六月十七日の午後に医者がきて、もう一日二日の処だから、親類などに知らせるならば今日中にも知らせるがよいと言いますから、それではとて取敢ずあなたのお母さんに告げると十八日の朝飛んできました。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
我れはかゝる果敢なき運を持ちてこの世に生れたるなれば、殿が憎くしみに逢ふべきほどの果敢なき運を持ちて、この世に生れたるなれば、ゆるし給へ、不貞の女子に計はせさせ給ふな、殿。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
果敢なき楼閣を空中に描く時、うるさしや我が名の呼声、袖、何せよ彼せよの言付に消されて、思ひこゝに絶ゆれば、恨をあたりに寄せもやしたる。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
「あはれ果敢なき塵塚の中に運命を持てりとも、穢なき汚れは蒙むらじと思へる身の、猶何所にか悪魔のひそみて、あやなき物をも思はするよ。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
秋かぜ少しそよ/\とすれば、端のかたより果敢なげに破れて、風情次第に淋しくなるほど、雨の夜の音なひこれこそは哀れなれ。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫
千里のほかまでと思ひやるに、添ひても行れぬ物なれば唯うらやましうて、これを仮に鏡となしたらば、人のかげも映るべしやなど、果敢なき事さへ思ひ出でらる。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫
それは亡き兄の物なりしを身に伝へていと大事と思ひたりしに、果敢なき事にて失なひつる罪|得がましき事とおもふ。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫