明け放つ
あけはなつ
動詞
標準
文例 · 用例
明け放つた後景の窓のあなたには暗示的な青い海が見える。
— 木下杢太郎 『海郷風物記』 青空文庫
そのできあがりを見ると、書齋の如何にも暗いのが義雄の現在の心持ちをそのまま現はしてゐるやうで――渠は自分で自分の死と云ふ世界に餘り遠ざかつてゐないやうな心を返り見ながら、明け放つた部屋の外に目を放つと、庭前の梅やあんずの枝葉が如何にも繁り過ぎてゐるのに氣が附いた。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
」氷峰は縁がはの明け放つた障子にぐツたりもたれかかつて、足を投げ出し、金主が餘り自分を子供あつかひにするのをこぼし、實は、ゆうべも、をととひの晩も、金を拂つたのは義雄の分だけで、自分のはなじみの女が出して呉れたのだが、三度目までもから手では行けないといふことを義雄にうち明けた。
— 放浪 『泡鳴五部作』 青空文庫
蒲團を方づけ、障子を明け放つてよく風を入れ、火鉢の火と鐵瓶の湯とを持つて來てあつた。
— 斷橋 『泡鳴五部作』 青空文庫
新公はさう云ふ彼女の変化に注意深い目を配りながら、横歩きに彼女の後ろへ廻ると茶の間の障子を明け放つた。
— 芥川龍之介 『お富の貞操』 青空文庫
戸を明け放つた縁側の外には、暗い山に唯一点、赤い炭焼きの火が動いてゐた。
— 芥川龍之介 『槍ヶ嶽紀行』 青空文庫
「提燈持ちは先よ」 と促されて、浩二が玄関の障子を明け放つ。
— 佐々木邦 『親鳥子鳥』 青空文庫
ひっそりと音をひそめていた和地の家が、久方ぶりで、からりと戸障子を明け放つかのようにみえた、伊緒がふたたびまめまめとはたらきだしたのである、手つだいの老農夫を相手に麦をとりいれ、苗代をかいた。
— 春三たび 『日本婦道記』 青空文庫